「名作コピーに学ぶ読ませる文章の書き方」でコピーの発想法を知る【まとめ・感想】
こんばんは。
就活の面接で、ダラダラと話してしまい「要約力・表現力なさすぎだ、自分 !」と感じることの多いわたくしですが、
本日「だったら、極限まで要約と表現が要求されるっちゅうウワサのコピーライティングとか勉強したら...いいんじゃないの〜?」と思い、こんな本を読みました。
- 作者: 鈴木康之
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2008/07
- メディア: 文庫
- 購入: 7人 クリック: 127回
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では突然ですがクイズです。
さて、あなたならどんなコピーを書きますか?
目の見えない物乞いが道に座っています。彼は首に札を下げていて、そこには
私は目が見えません
と書いてあります。
詩人アンドレは、彼のために札の言葉を書き変えました。それからというもの、彼の前に置いたお椀にはコインの雨がふりそそぎ、通行人が優しい言葉をかけてくれるようになりました。
そう、アンドレは、
春はまもなくやってきます。でも、私はそれを見ることができません。
と書いたのです。
目が見えないことは、彼の姿によってわかることでした...だから、それ自体を書く意味はない。
目的は、読んでもらって、施しの気持ちをおこさせ、行動してもらうこと。
これは、目的を果たしてこその言葉であること、コピーを変えるだけで人々の行動に大きな影響を与えることができるということを示す顕著な例です。
読み手に「自分に呼びかけている」と感じさせられるか
様々なサービスをなくしたことで、圧倒的に安い価格を成立させた航空会社、AIR DO。
こういう企業が、成功するか、失敗するかで、日本の将来は決まる、と思う。
というコピーを打ち出しました。
「あなた」と直接的に呼びかけなくても、人々に「自分が、この国の将来を考えているか、問われているのだな」と感じさせる、秀逸なコピーです。
差別化する
英会話教室Gaba。このあとに、「たとえばおいしい寿司を食べたいとき、天ぷらも焼き肉も寿司もありますという店より、寿司だけ専門にしている店に足が向くのではないでしょうか。」とつづきます。
的確なたとえ話で、「マンツーマン専門」であることの価値を印象づけるスゴイ広告です。
後悔しないように、と迫る
人は健康な時に、
そうじゃない自分を想像するのが、
なんて苦手なんだろう。
例えば、今あなたが50代だとします。80歳のあなたが想像できますか。元気でしょうか。好きな旅行に行っていているでしょうか。家族はどうしてますか。お酒は飲んでいますか。運動はつづけてますか。しあわせ、でしょうか。 わらかない----わからないですよね。
東京海上日動サミュエルによる、シニア向け住宅。
ココロが痛くなります。「人は健康なときに、健康じゃないときを想像できない。」とか言われたら「いや、私はわりと病気もしたし、想像できていると思うよ!?」と反発しますが、「なんて苦手なんだろう。」という〆が良いですね。
だれかの実感のこもったため息を聞いているようで、なんだか共感を誘います。
「コピーは読み手とのゲーム」
である、と筆者はいいます。
どういうゲームかというと、読んでくれる人が、「それはトクだな、そうしないのはソンだな。」と思ってくれて、「もっともだなあ、道理だなあ」と納得してくれて、メッセージ通り行動を起こしてくれたら勝ちの、ゲームです。
そのために、広告を<道理><説明><メッセージ><オドシ>に分けると理解しやすいようです。
例に挙がっているのは、金鳳堂のメガネのクリアニング広告。
メガネは、涙をながせません。 <道理>
だから、クリアリング。これまでの洗浄と違います。メガネの新しい点検・整備。
目に入ったホコリは、涙が流してくれます。 <道理>
しかし、メガネはそれができません。 <道理>
汚れてもホコリが入っても、そしてネジがゆるんでもそのままです。 <説明>
ときどき総点検をしてあげましょう。 <メッセージ>
メガネは、もうひとつの眼なのです。<道理>
......
年に2度はクリアリングとご記憶ください。 <メッセージ>
あなたのメガネは想像以上に疲れています。 <オドシ>
そして、「メガネは涙をながせません。」の「ながせません」をひらがなにしたのも、ポイントなんだそうです。これがあることで、「メガネ」と「涙」のふたつが主役として目立つ、と。
発想の方法--「人と同じことを思い 人と違うことを考えよ」
死ぬのが恐いから飼わないなんて、言わないで欲しい。
飼いたいけど飼わないという人がいたら、伝えて欲しい。犬たちは、
あなたを悲しませるためにはやって来ない。
あなたを微笑ませるためだけにやって来るのだと。
どこかの神様から、ムクムクしたあったかい命を
預かってみるのは、人に与えられた、
素朴であって高尚な楽しみでありますよと。
これは日本ペットフードの広告で、児島令子さんが書いたものです。
彼女はこのコピーで賞をとりましたが、そのさいのコメントで
コピーって、企業の代わりになって書こうとしたらしんどいです。
ターゲットの気持ちを代表なんかして書こうとしてもしんどいです。
誰かの代わりにコピーを書くのはしんどいから、
誰の代わりにもならず、自分の気持ちでコピーにしていけたらいいな、
という野望を持ち始めてもう何年もたちます。
と話されていたそうです。
ほかには、「人と同じことを思い 人と違うことを考えよ」の例として、JTの広告で岡本欣也さんが書いた「あなたが気づけばマナーは変わる」シリーズの
700度の火を持って、私は人とすれちがっている。
や、
たばこを持つ手は、子供の顔の高さだった。
も挙げられています。
男の目、女の目、老人の目、子どもの目、外国人の目、鳥の目、虫の目、20年後の人の目、100年後の人の目...
いろいろな人の目から見て、立場から考えよう、視点・観点は世の中を見渡せばいくらでもある、と著者は語っています。
そのうえで、
- 情報:コピーの基本は説明力。内容がなければ説明できない。説明に足るだけの事実を知っているか、調べたか、人に話したいと思えたか。
- 整理:より豊富に、親切に、条件内で説明するための情報の整理。
- 表現:無駄はないか、いい余韻を残せたか。もっと適切な表現がないか
という3つの評価軸を紹介しています。
感想
正直、私はコピーを誤解していたな、と。
とりあえずなん百個もひねり出して、選んで、いいコピーが出てくる。名人だと、その確率が高くなる。
わけじゃなくて、
徹底的に、視点を洗い出す。インタビューして、「だれかに話したい!」事実を集める。
それを、削ぎ落として、魅力的な表現にして、吟味して、しまくって...。
たった、数行の、もしかしたら一行のコピーが出来る。
泥くさくて、人間らしいものの結果として、コピーが出来るんだなあ、と。
まだまだたくさんの事例が載っていて、非常に興味深い一冊でしたので、良かったらどうぞ。
- 作者: 鈴木康之
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2008/07
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